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先日、あるお客様と株式会社の設立手続について打ち合わせをしていたときのことです。
株式会社を設立すると、毎年、定時株主総会の終了後、貸借対照表を公告する必要があることを説明しました。
すると、そのお客様から「貸借対照表ってなんですか?」というご質問をいただきました。
貸借対照表という言葉は聞いたことがあったようですが、この方はこれまで自分で事業を行ったことはなく、貸借対照表は作成したことがないということでした。
「貸借対照表とは会社の財産目録のようなものですよ。」と説明し、今後のこともあるからと会計事務所を紹介しました。
しかしあとから、貸借対照表は財産目録といってよかったのだろうか、と思いました。
たとえば、貸借対照表には土地や建物等の固定資産も載っています。土地は基本的に取得した際の価額が記載されていて、現在の価値を示しているわけではありません。また、建物は毎年、減価償却という処理がされていて、取得した際の価額が記載されているわけでもありませんし、現在の価値が記載されているわけでもありません。さらに、資産とはいえないような繰延資産や、引当金といったものまでが記載されていることもあります。財産目録といってよいのかどうか、すっきりとしません。
実は、今の会計制度はどちらかというと損益の計算を重視しているため、損益の計算技術が貸借対照表に影響を及ぼしているのです。
たとえば、事業に使用するために建物を購入したとします。この購入費用を全部、今年の費用としたらどうでしょう。今年も来年も売上や他の経費は変わらないとした場合、今年は大赤字で、来年は黒字になるというようなことが起こることになります。仮に今年と来年で経営者が変わった場合、同じくらいがんばったにもかかわらず、損益を比較した上では、今年の経営者は経営成績が悪く、来年の経営者の方が経営成績がよい、ということになってしまいます。これでは公平とはいえません。ですから、毎年の経営成績を公平に比較できるよう、建物の購入費用を一度、貸借対照表に計上し、一定の額や率で毎年、損益計算書上の費用にしていくのです。減価償却にはそんな意味もあるのです。
もちろん、これは大雑把な説明ですし、会計の専門家でもない司法書士の私が正確に説明できるものでもありません。詳しくは会計の専門家である、公認会計士の先生や税理士の先生にお聞きいただきたいと思います。
ただ、会社等の法人の登記を行う場合、最低限の会計知識は必要だと思います。
私たち司法書士も、登記に必要な最低限の範囲になるとは思いますが、会計の分野にも目を向けていきたいと思っています。
■宮城県司法書士会主催の研修会の講師を務めました。
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