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2014/11/25(火) 商業登記規則等の改正 司法書士 立花 宏
もう、ご存知の方も多いと思いますが、商業登記規則等の改正が予定されているようです。
法務省では、現在、この改正に対する意見募集を行っています(平成26年12月14日まで)。
改正内容の概要は次のとおりです。
 (1)取締役、監査役又は執行役の就任の登記申請について住民票の添付が必要となる。ただし、その申請で、当該取締役等の印鑑証明書を添付する場合は除く。
 (2)代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出している者に限る)の辞任の登記の申請をする際に添付する当該代表取締役等の辞任届には、当該代表取締役等の個人の実印を押印した上で、印鑑証明書の添付が必要となる。ただし、辞任届の押印を、登記所に提出している印鑑で押印した場合を除く。
 (3)取締役等の就任の登記をする際、婚姻により氏を改めた取締役等につき、婚姻前の氏も併記することができる。

 この改正は、会社の登記だけでなく、商業登記規則を準用している一般社団法人や一般財団法人の登記にも準用されることになります。
 また、各種法人等登記規則も改正され、上記の(2)と(3)が準用される予定です。つまり、(2)と(3)の規定は、医療法人や社会福祉法人、司法書士法人の登記手続にも準用されることになります。

 改正時期は来年2月頃とされております。関係各位におかれましては、施行時期にご注意いただければと存じます。

 ところで、上記の(2)で、辞任届に個人の実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要がある役員の中に、登記所に印鑑を提出している取締役と執行役が含まれています。
 代表取締役ではない取締役が印鑑を提出することはあり得ますが(有限会社)、執行役がいる場合(委員会設置会社)、必ず代表執行役が選定されます(会社法第420条)。
 代表執行役ではない執行役が印鑑を提出することはないのではないでしょうか。

 では、この登記所に印鑑を提出している取締役と執行役はどういう趣旨で規定されたのでしょうか。

 たとえば、取締役会を設置している株式会社を想定してみます。
 代表取締役たる取締役が、取締役を辞任するという辞任届を提出したとします。
 この場合、取締役は辞任したことになりますが、代表取締役は、前提資格である取締役の資格を失ったことによる退任となります。
 よって、代表取締役を辞任することにはなりません。
 もし、(2)の規定で、取締役を規定しておかないと、こういったケースでは、辞任届に個人の実印を押印し、印鑑証明書を添付するという規定が適用されないことになります。

 おそらく、(2)の規定に、取締役と執行役が規定されたのは、こういったケースでも、同規定が適用されるようにするという趣旨なのだと想像しています。
 今後の解説を待ちたいと思います。


2014/11/07(金) 補欠監査役 司法書士 立花 宏
 株式会社の役員改選登記手続をご依頼いただくことの多い私たちの仕事上、「補欠監査役」という言葉を使うことがあります。“補欠”として選任された監査役を指して使用しています。
 定款に、「任期満了した監査役の“補欠”として選任された監査役の任期は前任者の任期の満了すべき時までとする」という内容を定めている株式会社が多いと思いますが、そういった株式会社では、監査役がこの「補欠監査役」に該当するかどうかで、任期の満了時期が異なることになります。

 ところで、この「補欠」とはどのような意味でしょう。
 この「補欠」の意味については、会社法施行当時は解釈に混乱があったようにも思います。現在では、この「補欠」の意味の解釈は落ち着いていると思いますが、平成18年の会社法施行後、役員の任期を10年に伸長した会社の役員の任期が満了するケースも出てきていることから(平成16年に役員改選後、役員の任期を10年に伸長したケース)、これを機に、あらためて「補欠」の意味をまとめてみたいと思います。

 実は、会社法では、「補欠」についてはなにも定義されていません。
同法第336条3項に、「定款によって、任期満了前に選任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない」と定めているのと、同法第329条第2項に、「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて、補欠の役員を選任することができる」と定めているくらいです。
(※条文中、下線は筆者による)

 前述の第329条第2項の規定を見ると、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠く場合に備えて選任した役員のみが「補欠」となるようにも思えます。

 しかし、結論から言うと、「補欠」の意味はそうではなく、あくまでも、現状員数の欠員を補充するという意味なのです。
 たとえば、監査役が2名いた株式会社で、そのうち1名の監査役が辞任したとします。定款には、監査役を1名以上置く、とのみ定めています。辞任した監査役の後任を選任する際、この監査役を「補欠」として選任すれば、この監査役は補欠として選任された監査役、すなわち「補欠監査役」となるのです。現状員数2名だった監査役のうち1名が欠員となり、監査役を1名、補充する際、補欠として補充すれば、その監査役は「補欠監査役」なのです。
この株式会社の定款に冒頭の定款規定があり、任期を前任者の任期の満了すべき時までである「補欠監査役」として選任すれば、この「補欠監査役」の任期は、前任者の任期の満了すべき時までということになります。

 前述の第329条第2項の、「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠く場合に備えて」の部分を、補欠を選任できる場合の条件と考えると、この第329条第2項に基づき予選された監査役だけが「補欠監査役」ということになります。
 しかし、第329条第2項の、「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠く場合に備えて」の部分はそのような意味ではなく、予選することができることと、予選できる場合の条件等を明確化しただけであり、補欠を定義し、その範囲を限定したものではないのです。

参考資料
 一般社団法人商業登記倶楽部ホームページ
「やさしい商業登記教室」第42回
 


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