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2015/07/03(金) 一般社団(財団)法人の外部役員の登記(2) 司法書士 立花 宏
 前回、一般社団(財団)法人において、責任限定契約を根拠とする外部理事及び外部監事の登記がされている場合に、改正前の規定によれば、外部理事又は外部監事の要件を満たさないこととなった場合には、外部理事又は外部監事である旨を抹消すべきか、という疑問について、記載してみました。

 今回は、前回に引き続いて、もう少し、この論点を掘り下げてみたいと思います。
 
 そもそも、責任限定契約を根拠とする外部理事及び外部監事の登記は、なぜ、なされていたのでしょうか。
 今回の法改正前に、ある一般社団(財団)法人の定款に、外部理事及び外部監事と責任限定契約を締結できる旨の定めがあり、外部理事や外部監事が存在した場合、その全員が登記されていたでしょうか。
 
 株式会社についての解説ですが、「責任限定契約を締結する社外取締役と締結しない社外取締役がいる場合、後者については社外取締役である旨を登記する必要はない」(注1)とされていました。「より正確には、会社が責任限定契約を締結しようとするときに登記すべきとされている」(注2)ということのようです。

 ということは、責任限定契約を根拠とする外部理事及び外部監事の登記は、責任限定契約を締結する対象である外部理事及び外部監事を公示するという意味があったといえるのでしょう。

 法改正後は、一般社団(財団)法人には、外部理事及び外部監事についての法律上の規定はなくなりました。これについての経過措置もありません。よって、法改正前に外部理事として登記されていた理事が、法改正後に外部理事の要件を満たさなくなる、ということは生じないと思われます。

 ところで、法改正前に責任限定契約を根拠に外部理事として登記されていた理事が、法改正後、その任期中に業務執行理事となった場合はどうでしょうか。

 この理事を、経過措置があるとはいえ、外部理事として登記したままでいいといえるでしょうか。業務執行理事となったことにより、責任限定契約を締結できる理事ではなくなります。それにもかかわらず、責任限定契約を根拠とする外部理事の登記をそのままにするのは、適切とはいえないのではないかと思います。
 
 法改正前に外部理事であった理事が、法改正後に外部理事でなくなる、ということは生じないように思います。しかし、責任限定契約を締結できる対象でなくなったのであれば、経過措置があるとはいえ、やはり、責任限定契約を根拠とする外部理事という登記は抹消するべきだと思います。

 前回も記載しましたが、この論点を解説している資料を見つけることができていません。
 お恥ずかしい限りですが、一般社団(財団)法人の責任限定契約関係の登記の経験がなく、実務がどのように運用されているのか、把握できておりません。
 
 実務の運用の情報を得次第、あらためて、ご報告したいと思います。


(注1)「論点解説 新・会社法」(商事法務)P.298
(注2)商業登記ハンドブック第2版(商事法務)P.59


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